イングランドでMBAをやった後、フランスに数年住んでいた。
そこで実感したのが表題の通りである。
自分自身はフランスに住む前から、旅行としてパリを訪れたこともあり、
という認識があった。
フランスに住んでいたというと
と実に多くの人に言われる。
これは「フランス人は英語が話せる」という認識が前提となっているから、筆者としては違和感を覚えざるをえない。
今回はそこについて書いてみたいと思う。
フランス人は勉強しないと英語は話せない
どうしてそういう認識になっているかといえば、
とイメージしている人が多いという感じである。
まず、確かに日本語と比べれば当然フランス語と英語は非常に近いというのは事実だ。
しかしそれは、ヨーロッパの人から見れば中国語と日本語が非常に近いというのと同じようなものである。
我々が中国語を勉強するならば、彼らより圧倒的有利なのは確かである。
しかし…
日本人の我々も、中国語を勉強しないで話すことなどできない(笑)
もちろん中国人も勉強しないと日本語など話せない。
確かに英語にはフランス語からの借用語が非常に多い。単に過去にフランス語がヨーロッパの外交言語だったから、というだけではなく、歴史的な経緯として
しかし、日本語にも漢語はそれと同じくらい入っている。日本で作られた熟語ももちろんいっぱいあるが、中国語からの熟語は沢山あるのだ。
だからといって、繰り返しになるが、中国人が勉強せずに日本語が話せるわけではない。
文法的にはそんなに近いわけではない
これも、もちろん日本語と比較したら近いに決まっている。しかしフランス語を勉強していると覚えるべき文法がめちゃくちゃあるのだが、英語にはない発想のものが多くあるし、逆に英語にある発想がないということもある。
特に自分は
この本を中心に英語で説明されたフランス語文法書を読んでいるのだが、時々そういうところがある。
フランス語はロマンス諸語に属しており、親戚の言語といえばイタリア語、スペイン語、ポルトガル語、そしてルーマニア語もここに入るそうである。
パリなどに出ると、フランス語の注意書きの下に、英語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語の同内容の表示を見ることがあるが、イタリア語とスペイン語は明らかに似ていて、特にイタリア語は文構造や語彙など非常に似ているように見えた。
筆者はゲルマン語系の言語を学んだことがないので何ともいえないが、英語は大変流暢で、フランス語もそれなりにできるというスウェーデン人曰く、スウェーデン語(ゲルマン語系)と英語は、英語とフランス語の距離よりはるかに近いということだった。
いずれにせよ、フランス語を勉強してみるとわかるが、これを母語としている子供が
それくらい普通に異なる言語だ。
では実際フランス人はどの程度話せるのか
これは筆者の体感だが
この話せる、というのは、完璧ではないし訛りもあるものの、普通に堂々と話せるという感じである。
やはり
ので、勉強した層なら話せる、というところだろうか。
そして先ほども書いたように、英語にはフランス語からの借用語が多い。
また近代までヨーロッパの外交言語はフランス語だったため、英語にはフランス語の単語や、少し綴りが異なるもののフランス語やラテン語が元になった単語が多い。
更に
ということが多い。
たとえば、まだフランス語を学び出す前だが、フランス人と英語で話していて、ささいなことに対して
とやたらに言うので、
と感じていた。catastrophe、「大災害」という単語は難しいと言うほどではないが、口語としてならdisasterの方が自然に感じられたし、新聞やニュースの単語という感覚だった。
しかしフランス語の学校に入ってみると、
というのが日常的なフランス語で、「最悪!」「マジかよ!」みたいなノリで気軽に口にするフレーズだとわかり、
直訳じゃねーか…
とわかったわけなのだ。
そういうわけで、英語を一通り勉強してしまえば、フランス語からの借用語単語をやたら多用して、むしろ小難しい英語を話せてしまうという感じだ。
中国語が英語に取って代わった場合の日本を想像すればわかる
つまり、日本では中学からの外国語教育は、一部の私立を除けば(フランス語を選択できる学校もある)英語なのだが、
と想像した場合
と普通に分かれるのは想像できると思う。
いくら「ヨーロッパ言語を母語とする人より、日本人は漢字に対して有利だから必要勉強時間が少なくなる」とはいえ、だからって必要なだけ勉強をやり切る人は限られてくる。
しかも、別に語学が特に必要ではない分野に進む場合、たとえば資格試験に忙しくて語学に割ける時間のない人は沢山いるし、理系で語学に特に情熱のない人もいるだろうし、文系でも別に中国語が最も使えるからって即情熱的になるわけではない人もいるだろう。
それに英語でも多い、「読み書きは一生懸命勉強したので不自由ないが、発音に自信がないので話す訓練を怠ってしまった」という人も、中国語になっても出てくると思われる。
実際のところ、英語に自信がある人は隙あらば英語を話す
日本では、外国人を見ると、「英語を話さなきゃ」と思う人が多いが、当然英語が全然話せない外国人もいる。
しかし、それと同じように
フランス人も日本人のような外国人に対して英語を話さなくてはいけない、と思う人は案外多い
実際、特にパリという大都市で観光客がとんでもなく多いと
ので、店などに入り、こちらが語学学校で習ったフランス語を頑張って話しても
とイキイキとした表情で言ってくる店員は多いのである。
語学学校で知り合った日本人女性がうんざりしたように
「私は英語話せないし、今こうして学校に来て勉強しているフランス語の方がわかるのに、英語で言ってくる人多い。」
と言っていた。
日本でも外国人にやたらに英語で話しかけたがる人というのがいるそうだが、フランスでもそういう人は多いのだ。
英語を話せる自信のある人は頼まなくても英語を話したがるという印象である。
よって、英語で道を聞いたけどフランス語で返事してきた、ということがあったのであれば、それはそれくらいの英語を聴き取って理解することはできたが、英語を話すことはできない人なのである。
ただ、日本人との大きな違いは
のも事実であると思う。特に年配の女性は機嫌が悪くなる人が多いのではないだろうか。
ただ、もちろん
I speak English very very little— sorry—-
と謝ってきたフランス人も時々はいた(50代くらいの女性もいた)。彼らは本当に話せないのだが、日本人が “I can’t speak English”というのに対し、very very littleとつけながら否定文では言わないところもフランス人的である。
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